【短編小説】【恋愛】 山荷葉のような彼女に僕は恋した 【サンカノ】【#1】【回想】【初心者】
#1 回想
「愛を教えてくれて、ありがとう。」
その日僕は、誰よりも愛していた彼女に、振られたんだ。
あれはたしか、今より8年前。僕がまだ22歳の時の話だ。
そう。あの日はキャスターのお姉さんが、今晩は数年に1度の大雨だと騒いでいた。
忘れるはずもないね。
彼女はそんな日に、僕の家で突然そう告げてきたんだ。
僕は動揺してしまってね。情けない話、しばらく放心状態だったんだ。
そんな中彼女は、僕を少し気に掛けつつ、
既に被っていたフードをより深く被り、部屋から飛び出していった。
僕は動けない体をひっぱ叩いて、靴も履かずに追いかけたよ。
振られたからって、好きだったからね。 女々しいかな?
でも、動かずにはいられなかったんだ。
雨で数メートル先の看板も見えない状況で、とにかく我武者羅に走り回った。
でも、彼女は神隠しにでもあったのかっていうぐらい見つからなくてね。
一晩中探したけど、彼女の髪の毛一本すらも見当たらなかった。
その後、電話もメールもしたけれど、8年経った今もなお連絡が取れてない。
でも、どこかで生きているという風の噂だけは耳に入っているんだ。
僕は、嫌われてしまったのかな。
だけどね。彼女が生きてくれているだけで、どこか安心している僕がいるんだ。
今でも振られてしまったことは悲しいし、寂しいよ。
でも彼女と過ごした日々があったからこそ、今強く生きていられていると思うんだ。
ん?彼女はどんな人だったかって?
そうだなぁ、一言で言うなら、、、そう、、、
【山荷葉のように、愛に満ち溢れ、自由奔放だった。】
#2 出会い へ続く。