【梛文】#9 天狗の鼻は、必ず折られる
彼女は小学校では、独りぼっち。
暇な時間は勉強に費やした。
中学校に上がり、部活が始まり、忙しくなった。
それを言い訳に、勉強をおろそかにしてしまった。
中間テストまで、ろくに勉強をしなかった。
それでも、小学校で蓄えた学がそれなりにあり、
勉強をしなくても、トップ10入りしてしまった。
周りは褒めてくれた。
彼女は調子に乗った。
自信の成績を自慢して回った。
勉強しなくても、余裕だと勘違いしてしまった。
期末テストも同様に、勉強せず臨んだ。
結果は、散々だった。
順位は100位にまで落ちた。
皆が成績開示後、彼女のもとへ寄っていった。
何位だったか、分からないところを教えてほしい。
彼女は、それらに答えることができなかった。
いつしか、彼女の周りに人はいなくなった。
嘘つきとまで言われるようになっていた。
最初のトップ10も嘘だったと、あらぬ噂を広められていた。
悪口もたくさん言われた。
「調子に乗って、天狗になっていたからだ」
皆にそう言われた。
彼女自身もそう考えていた。
彼女の鼻は、折られた。
折られた鼻は、どこにあるのだろう。
彼女は、探そうとはしなかった。
折られて初めて、視野が広くなったという。
彼女は強く生きている。
高校受験には失敗したと聞いた。
それでも努力をし、大学受験は成功したらしい。
天狗の鼻は、必ず折られる。
折れた後、天狗がどう動くか。
私は、それが一番気になる。
そこから背にある羽を活かし、飛ぶも飛ばぬも天狗次第。
そんな、1人の天狗のお話。